水の中
私が中学の時でした。
何かで学校を休んで家にいて
気分転換に近所を散歩してた時なんですが。
(いいのか?)
近くの川岸がお気に入りの場所で
小さいときからそこでよく遊んでました。
桟橋にロープで古い船が水面に浮かび
背の高い草がその辺りを覆っていました。
そこは静かでめったに誰も来ないので
私の秘密の息抜き場所でもありました。
それでもたまに
板搭婆が置いてあったりすることがあり
いかに人が来ない所かを物語ってました。
船は少し朽ちていたし
増して乗り物に弱い私は
それを横目に桟橋に腰を降ろしました。
裸足になり
足を水に晒しながら歌を唄って上機嫌に。
足甲まで水草に埋まり
水の流れを感じていて小1時間もした頃でしょうか
足の裏を
撫でたりつつく魚がいて
くすぐったいので足を上げようとしました。
…?
両足が上がらないのです。
まるで水に足が固定されてしまったかのようでした。
その頃祓い事を真剣に
勉強し始めて間もなかったのでまだまだ力も弱く
経験も浅いため、少しパニクってしまいました。
「やだー!」
(学校行かないでこんなとこに来た罰?)
大きな声を出したものの
人が来ないそこでは
どうしようもありません。
水草で足が見えないのでよけい怖くなりました。
足に触れているのは魚なの?
ほんとに魚?
考える程ドキドキが大きく。
大体なんで足が上がらないのか
全く分かりません。
足に触れる何かが
気持ち悪くて仕方無かった。
私は冷静さを取り戻して、深呼吸をし
神経を辺りに巡らせてみました。
(独りってほんと怖いです)
どこかから
私を見ているものを感じて
捕まったことがわかりました。
前ここに来たのは考えてみれば2年も前です。
その間に何かあったのか
それともたまたま居たのか来たのか
話をしようにも答えがありません。
「どこから見てるんだろ?」
後ろも前も気配がなく
まさかとは思ったけどそこしかありません。
そう、水中です。
足はどんどん冷えてきました。
しびれて感覚が無くなるほどに。
触ったりつつくのも感じなくなりました。
ふと気付くと
水面が少しずつ上がってきています。
満潮時にはこの桟橋もすっかり沈んでしまうのでした。
時間をかけてゆっくりではありますが
着実に水面は私の足を上がっていきます。
祓詞もまだ完璧に使いこなせないし
泣きそうになりました。
学校休んでこんなとこで変な事になるなんて
シャレになりません。
膝辺りまで水嵩が増した頃
ガチガチと震えが来て
急激に体温が下がってきた感じで
真剣にヤバイと思いました。
完全に弱気になった時
ぐっと足が引っ張られ始めました。
そこで私は我に返り、反発心が沸き上がったんです。
(天邪鬼ですね)
生きてる私が負けるわけない!
なんかわからんけどあっちいけ!
そう思いながら
とりあえず出てくる限りの祓詞を唱えました。
でも状況はさらに悪化。
引っ張る力はさらに強くなり
冷たくて感覚の無いはずの足首を
しっかりと握る何かを感じました。
それでも祓詞のお陰か
少しずつ足を振る事が出来るようになり
精一杯大きく足を前後に揺り動かしました。
足先でゆらゆらと水草がかき分けられ
足が見え隠れします。
水草の間に
足首をつかむ真っ白い手と
目が見えたのです。
ざわっと体に何か走り
その勢いでそれに向かい気合いを入れました。
「消えろ!」
桟橋は水に濡れ始め
私はズボンがビショビショ。
水の中にその姿は消えました。
足首には紫色になるほど
きつい力だった事が分かる手の跡が。
這うようにして水から逃れ
足の感覚が戻ると家に飛んで帰りました。
親には死ぬほど叱られ
(こっちの方が怖かったかも)
私は高熱で
それから1週間寝込んでしまいました。
関係があるのかどうかは分かりませんが
後で聞いた話だと
1年半位前にそこに死体が流れ着き
身元が分からず無縁仏となったものがあったとか。
そのせい…かな?
(未熟ですいません)
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